三つ子の魂 百までも その2

あなたにとって、心温まる場所や、心安らぐ音とは、何ですか?

亜子さんにとって、「ネオン街」が、心温まります。
電車や自動車や人々の行き交う「雑踏」の音が、心安らぎます。

亜子さんにとって、静かで暗い場所は、虚無感や、喪失感や、底知れぬ恐怖感を抱かせるばかりです。
川のせせらぎや、風にそよぐ木々の枝葉の音は、心がざわめくばかりです。

亜子さんは、東京都・中目黒の生まれです。
渋谷の「ネオン街」や「雑踏」の中で育ちました。

そんな亜子さんは、小学2年生の春に、神奈川県相模原市に引っ越して来ました。
幼いながらも、カルチャーショックの日々でした。

最寄の駅から自宅までは、バスに乗っても、最低15分は、かかります。
子供の足では、到底歩き通せる距離ではありませんでした。
東京生まれの亜子さんには、とても考えられない事でした。

道路以外は、「アスファルト」が未だ少なく、
「草」の生えた「土」の上や、砂利道をトボトボ歩かなければなりませんでした。
雨の降った後は、「泥」がつく危険性がありました。
東京生まれの亜子さんには、とても考えられない事でした。

亜子さんにとっては、毎日がストレスでした。

「グリーンさがみはら」をキャッチフレーズに掲げる相模原市には、保存林が沢山ありました。
亜子さんの自宅のそばにも、林がありました。
家は未だ少なく、夕方になると、少ない街灯がポツリポツリと点くだけでした。
東京生まれの亜子さんには、とても考えられない事でした。

亜子さんにとっては、毎晩がストレスでした。

相模原市に引っ越して来てから、2年間、毎晩のように、「幽霊」や「お化け」の夢を見て、うなされました。

亜子さんにとっては、一晩中ストレスでした。

台風がやって来ると、亜子さんは、一晩中眠れませんでした。
近所の保存林が、激しい強風にあおられて、恐ろしい叫び声を上げ続けるのです!!
亜子さんの恐怖心は、もう絶頂を迎えます。
でも、両親は、全く気づかずに熟睡しています。

亜子さんにとっては、長年ストレスでした。


やがて相模原市は、急激な人口増加を遂げ、さらなる発展を続けています。
でも、相模原市は、亜子さんにとって、ストレスの記憶しか有りません。

時々、亜子さんは、何かしらの理由をつけては、雑踏の中のネオン街を歩きます。
心まで凍る、寒い冬は、クリスマスのイルミネーションの一つ一つが、
亜子さんの心を、ほんの少し解かしてくれます。

人間は、何事も、子供時代の経験や記憶に縛られ続け、
大人になっても、そう変われるものではないのだなーと、つくづく思います。

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